2018年12月01日

2018年12月号 「巻頭言」

12月巻頭言

                      
中川 明 神父


「月夜のでんしんばしら」という宮沢賢治の童話があります。ある晩
恭一という少年が鉄道線路のすぐ横で、電信柱の行進を見ます。
ところが、そこを通りかかる夜汽車の乗客には見えません。夜、車内は
車内燈で明るく、外を見ようとしても窓ガラスは鏡のようで、自分の
顔が映るばかりで、なかなか外の風景は見えないのです。つまり、
あの少年には見える「月夜の幻想」は「夜汽車の車内の現実」に
いる私達には見えないのです。私達には見えないことがたくさん
あるのに、見えないことに気づいていないと、童話は示唆するのです。

 両親の介護を通して、妹たちとの接点が増え、仲良く
なりました。それは知らなかった妹たちの世界に触れ、私の気づいて
いなかった「世界」が、「見えていた世界」の背後に大きく広がって
いることを垣間見て、妹たちへの愛おしさが増したからです。

 夜汽車の車内から外が見えることがあります。車内燈が消え
車内が真っ暗になる時で、童話では、きまった時期にそうなります。

クリスマスがそんな時になるように祈ります。
見えなかった世界が少し見え、互いを愛おしく思えますように。
(別役実の解説を参考にしました。)
posted by カトリック明石教会 at 10:53| Comment(0) | 巻頭言